絵本を選ぶ視点

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絵本を選ぶ視点 ~はじめに~

子どものこころによりそって

ゴッホの『歩きはじめ』という絵があります。初めて歩く幼いわが子の可愛い姿に、思わず農具を放り出して両手を差し出す父親。赤ちゃんをうしろからささえて見守る母親、 いつの時代も、文化や生活が違っても変わらない親子の姿です。このように、赤ちゃんがはじめて自分の足で歩きだし、ころびそうになりながらも1歩1歩、一生懸命前に踏み出そうとするとき、赤ちゃんを見守る大人は、誰に教えられたわけでもなく自然に、ここまでなら来られるかなと思われる場所にしゃがんで、両手をさしだし、赤ちゃんを応援します。

身体の成長は目で見ることができます。ですから大人たちはちゃんと赤ちゃんの目線に合わせて姿勢を低くし、笑顔で見守りながら待つことができます。そして、腕の中にやってきた赤ちゃんをしっかりと抱きしめることでしょう。この時、やっと自分の足でヨチヨチと歩き始めたばかりの赤ちゃんの手を、ぐいっと引っ張ったり、「もっと早く歩きなさい」などと叱咤する大人は決していないでしょう。けれども、こころの成長は目で見ることができません。見えないがために、時には大人の都合や、勝手な解釈で子どものこころをおきざりにしてしまったり、無理強いをしてしまうことがあるかも知れません。こころの成長によりそい、その成長を見守ることはなかなか難しいことです。

絵本は、子どもたちのこころの糧とも言われています。幼い子どもたちは、絵本を読んでもらうのが大好きです。 子どもたちといっしょに、絵本を楽しむことは、そのこころによりそうことにほかなりません。子どもたちをひきつける絵本について考えることは、目には見えないこころを考えるきっかけとなるでしょう。体だけでなく、こころもどんどん成長する幼い時期、子どもたちの成長によりそうために、子どもたちが楽しめる発達にそった絵本について、今一度考えてみたいと思います。

大人もいっしょに楽しんでいますか?

大人もいっしょに楽しんでいますか?

子どもたちにとって、絵本とは何かを考えるとき、まずその前提として、絵本を読む大人の側に絵本とは楽しいものであり、喜びを共有するものであるという認識が必要だと思われます。子どもというのは不思議なもので、言葉にしなくても大人のこころを感じとるものです。そのことは、子どもと大人が一緒に遊んでいる様子を見ているとよくわかるのですが、一緒にいる大人も楽しんでいるときはじめて、子どもはこころから満足した表情になります。自分が楽しいだけではなくて、その楽しさを共有することが、子どもたちにとって本当の喜びなのでしょう。 喜びは分かちあってこそ実感となります。ですから絵本を選ぶときも、将来役に立つから、ためになるからと言う前にまず、絵本とはよろこびを共有するものであるという視点に基づいて、大人自身も絵本の世界を楽しみながら、今目の前にいる子どもたちの気持ちや発達、興味に重点を置いて選ぶ視点が大切です。

子どもたちはやさしく美しい声を聞いている 絵本を選ぶ視点 その1

文章について

まず、文章表現についてですが、子どもたちは絵本の文章を耳で聞いて楽しみますので、日本語として品性があって美しく、声に出したときの言葉の響きが耳に心地よいことが大切です。それはなにも、標準語でなければならないという意味ではなく、方言には方言にしかない味わいや豊かさがあり、それもまた絵本の楽しみのひとつです。それからまた、絵本には、会話にはでてこない表現もあります。

うらしま太郎

「うらしまたろう」(時田史郎再話 秋野不矩絵 福音館書店1974)の「かんげいのうたげ」「ふるさとがこいしくなった」「かなしみにうちひしがれ」などがそうした表現としてあげられますし、「つるにょうぼう」(矢川澄子再話 赤羽末吉 福音館書店1979)の「たえいるような、あえかな声でした」などは大人につるにょうぼうとってもなかなか説明が難しい表現です。

それにしても、これら日本語のなんと美しいことでしょう。この様な言葉も物語の中で語られることで、子どもたちは、絵にも助けられながら、その言葉のもつ意味合いやイメージを感じとることができます。

つるにょうぼう

こうして、絵本で様々な言葉を体験することで、子どもたちの言葉は実感を伴いながら豊かになっていくのです。人間は、言葉を使って思考を深めていきますから、言葉の豊かさは、人間としての豊かさにつながります。幼児期には、書いたり読んだりすることよりも、耳から母国話の美しい表現を聞くことの方がはるかに大切です。子どもたちが幼い時期に出会うやさしく美しい言葉は、そのまま幸福の記憶となるでしょう。

「絵」は子どもたちが始めて出会う「芸術」
絵本を選ぶ視点 その2

絵について

おおきなかぶ

次に、絵についてですが、これはどうしても主観的な要素がありますので、説明することがなかなか難しいのですが、やはり芸術としての質の高さ、つまり本物であることが大切だと思います。そこには画家の子ども観も大きく反映されます。つまり、読み手が子どもたちだからこそ、最高のものを描こうという意気込みが感じられる絵が、絵本にとってのよい絵ではないでしょうか。

幼児期はあらゆる感性を育む時期です。ですから、幼い時期こそが、本物の芸術に出会うためにもっとも適した時期と言えるでしょう。子どもの本の優れた表現者である、レオ・レオニ、バーニア・リー・パートン、フェリクスホフマン、赤羽末吉、秋野不矩、丸木俊、佐藤忠良、堀内誠一・吉田遠志等々は、芸術家として世界的に高い評価を得ています。そしてこれらの画家たちは、高い芸術性がありながらかつ、子どもたちが理解しやすい、子どものこころによりそった表現のできる人たちです。

おおきなかぶ

佐藤忠良は、「おおきなかぶ」の挿絵を描くときに、人物がどうしてもかぶを押しているように見えてしまうというので、何度も何度も鏡をみながらデッサンを繰り返したということです。子どもたちが絵本の絵をみれば物語を理解することができるほど、生き生きとした調和と変化が生み出されている、そのような絵の表現が絵本には必要です。可愛らしいだけの甘ったるい絵には、子どもに対する真摯な態度が感じられません。また逆に、芸術性を追求するあまり、創作者としての白已表現のために、絵本という表現形式に挑戦しているのではないかと感じられるものもまれに見られ、大人向きの絵本としてはよいのかもしれませんが、それらも子どものこころによりそうという視点からは、やはりはずれていると言えるでしょう。絵本の絵は、絵が絵としてその存在を主張するのではなく、物語を再現しながらもその物語の内に潜むテーマをも表現できたときに、本当に良い絵であると言えるでしょう。絵本を選ぶ大人には、その絵の芸術性だけでなく、表現の方法が子どものこころにとってわかりよく、子どもに対する誠実な姿勢が感じられるか、しっかりと見きわめる確かな目が必要です。絵本を選ぶときには、文を読む前に、パラパラとめくって、絵だけでお話を感じてみるのもよい絵を見分けるひとつの方法です。また、日頃から美術館や原画展に足を運ぶことで、だんだん目も肥えてくるように思われます。

絵は文に彩りを、文は絵に広がりを。
絵本を選ぶ視点 その3

文と絵の調和

かばくん

さらに、絵本は子どもが耳で聞いて目で読む本ですから、文章と絵がよく合っていることも重要です。絵本の絵と文はしっくりと馴染んでいて、調和しているものでなくてはなりません。文章では表現されないこともふくめ、物語を絵が語り、かつその主題をそこなうことなく、文章の流れと絵がマッチしていて、物語のもつ雰囲気を、語りと絵による相乗効果で表現していることが大切です。

いたずらスーホの白い馬ずらきかんしゃちゅうちゅう

バージニア・リー・バートンの「いたずらスーホの白い馬ずらきかんしゃちゅうちゅう」(村岡花子訳福音館書店1961)などのように、絵と文が同じ作者による絵本は、物語の楽しさとともに、絵と文の調和という意味においても無理がなく、高く評価されているのでしょう。しかしまた、絵と文が別の作者によるものには、1人の作者では成し得なかっただろうと思われるようなコラボレーションも生まれます。

40年以上にわたって、子どもたちに愛されてきた「スーホの白い馬」(大塚勇三作赤羽末吉絵福音館書店1967)や『かばくん』の文章と絵は、その作者と画家以外の組み合わせは、おおよそ考えられないくらい絵と丈章がひとつの芸術世界をつくりあげています。

絵は文に彩りを、文は絵に広がりを。
絵本を選ぶ視点 その4

内容

そらいろのたね

内容面では主題がしっかりとしていてわかりやすく、その主人公に子どもが自分を同化して楽しめることが絵本にとっての重要な要素です。幼い子どもたちにとっての物語は、現実は現実、お話はお話と、はっきりと区別して存在しているわけではありません。子どもたちは、時計の振り子のように、現実の世界とお話の世界を自在に行ったり来たりすることができる世界に生きています。『そらいろのたね』や『せんたくかあちゃん』が、子どもたちを強くひきつけるのは、それらが子どもたちの日常生活からはじまって繰り広げられる、身近なファンタジーだからでしょう。

せんたくかあちゃん

子どもたちに人気の絵本には、乗り物や動物を主入公にした絵本が数多くありますが、これらも子どもたちが主人公に自分を同化して楽しむために効果的な表現であると言えるでしょう。先にあげた『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』は、絵が生き生きと動きをもって描かれているために、子どもたちが自然に自分の姿を主人公の汽車に重ねることせんたくかあちゃん表紙ができます。

いたずらきかんしゃ

ここで、物語絵本を選ぶ時に注意を要する点についても考えてみたいと思います。まず一つ目に、『ピーターパン』や『オズの魔法使い』」などいたずらきかんしゃちゅうちゅう長編児童文学のダイジェスト版はあえて選ぶ必要はないと思います。その理由は、映画をあらすじで知っていても実際に観ると違っていたということがあるように、ダイジェストにしてしまうと、その作品の奥深さや登場人物の人間性までもがそぎおとされてしまい、身もふたもないうすっぺらなものになってしまう危険性が高いからです。これが世界の名作なのか、と子どもたちが誤解してしまっては困ります。これらの児童文学は内容が深く、かつ心躍る物語ですから、将来本物を読むときの楽しみとして、とっておいたほうがよいと思います。 二つ目は、昔話の内容を残酷だからといって意図的に変更したものも選ぶべきではないでしょう。昔話は世代から世代へと受け継がれてきた、生きていくための知恵の宝庫であり、先人からの大切なメッセージです。お話の最後ではやっつけられるのが常のオオカミを、殺すとかわいそうだからと、「森に逃げかえっていきました」という結末に変えてしまいますと、絵本の主人公に同化している子どもたちは、いつまたオオカミがやってくるかも知れないと思い不安になってしまいます。オオカミは生きていく上で直面する悪や災いの象徴ですから、うすっぺらな教訓のもと、「オオカミといつまでも仲良く暮らしました」などは論外です。

さらに、物語絵本は、しつけや教訓とは、明確に分けて考えるべきです。一見、物語絵本の形をとりながら、その実、内容は表面的な教訓であったり、しつけであったりするものは、絵本本来の楽しさを知っている子どもたちなら、その胡散臭さを敏感に感じ取るでしょう。それらは、子どもと大人が心を通わせて楽しむ物語絵本とはその本質が違います。親として、保育者として、子どもの未来に対する誠実な態度で絵本を選ぶことが、子どもたちへの愛情の証となるのです。

何度も繰り返し読んでほしがる本が宝物
絵本を選ぶ視点 その5

その他の視点

子どもたちは、こころから楽しんだ絵本は、何度も繰り返し読んでほしがるものです。絵本を選ぶ最良の基準は、子どもたちがその絵本を繰り返し読んでほしがるかどうかであると思います。そういう意味において、長年読みつがれている絵本は、子どもたちに支持されているという意味で絵本を選ぶときのひとつの目安となるでしょう。  

子どもたちに読む絵本を選ぶときには、これらの点に配慮しながら、最終的に自分で声に出して読んでみることも必要です。絵本の文章には、繰り返しやリズミカルな表現が工夫されているものも多くあり、それらの文章の魅力は声に出して読んでみてはじめて実感できるものです。さらに、できれば大人同士で読み合いをして、聞き手になってみることも、その絵本本来が持つ魅力を感じるためにとても有効です。何よりも、やさしく語りかけられる人の声の心地よさにつつみこまれながらじっくりと絵の細部を読む楽しみは、大人にとっても大きな喜びです。すでに自分で何度か子どもたちに読んだことがある絵本であっても、聞き手になってみるとまったく印象が違い、新しい発見があるものです。絵本の読み合いは素敵な時間です。保育にたずさわる先生方は特に、ぜひ読み合いをなさってみてください。  

絵本には、フィクションである物語絵本と、ノンフィクションの科学絵本がありますが、どちらのジャンルであっても、これまでに述べた点は、絵本を選ぶ際に共通した重要な撮点と言えるでしょう。そうしたよい絵本の中から、聞き手である子どもたちの顔を思い浮かべつつ、その子の興味や発達にあった絵本を、1冊1冊手にとって、ていねいに選ぶのもまた、大人にとっての楽しい時間です。

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